米上院共和党トップのマコネル院内総務は22日、最高裁判事の承認時期を明言しなかった(ワシントン)=ロイター
【ワシントン=中村亮】米連邦最高裁判所の次期判事をめぐり、トランプ政権と与党・共和党が11月の大統領選前の承認を探っている。共和党員の価値観に近い保守派判事を任命すれば選挙で優位だとの考えが目立つ。一方で判事を異例の短期間で承認すれば国民の反感を買うとの見方もあり、議会手続きの日程をさらに詰める。
トランプ氏は22日、18日に亡くなったリベラル派のルース・ギンズバーグ最高裁判事の後任を26日に指名するとツイッターで明らかにした。保守派の女性を起用する見通しだ。判事は大統領が指名し、議会上院(定数100)のうち過半数が賛成すれば承認される。共和党は53議席を占める。
焦点の一つは承認時期だ。トランプ氏は大統領選前の承認が望ましいとの見方を示唆している。ギンズバーグ氏の後任に保守派を充てれば判事9人のうち6人が保守派となる。最高裁の保守支配を固めればトランプ氏の功績だ。有力候補にあがるエイミー・バレット控訴裁判事は人工妊娠中絶に否定的なことで知られ、トランプ氏の支持基盤であるキリスト教福音派の考え方と似る。
上院でも選挙前の承認に向けた環境整備が進んだ。共和党のミット・ロムニー上院議員は22日の声明で「判事の資質によって賛否を決める」と説明し、選挙前の承認に反対しない立場を表明した。野党・民主党は次期大統領がギンズバーグ氏の後任を指名すべきだと主張するが、共和党に同調する動きは目立たない。判事の公聴会を開く上院司法委員会トップのリンゼー・グラム議員は選挙前の承認に必要な過半数の賛成票が集まったと明言した。
ただ承認手続きを最終決定する共和党トップのマコネル院内総務は22日、記者団に大統領選前の承認を目指すとは明言しなかった。国民の関心が高い最高裁判事を短期間で承認すれば政権・共和党に対する民主党員の反発が強まり、大統領選ではかえってマイナスに働く可能性があるためとみられる。
米紙ワシントン・ポストによると1975年以降の最高裁判事について上院への指名通告から承認に平均68日間かかった。指名された判事は与野党議員と個別に面会し、重要案件に関する考えを説明するのが一般的だ。過去には判事を19日間で承認した例もあるが、その際は全会一致だった。今回は民主党が承認に猛反対するのは確実だ。短期間で承認するには強行採決をせざるを得ない。
2018年の中間選挙直前にはトランプ氏が最高裁判事に指名したブレット・カバノー氏に女性への暴行疑惑が浮上。共和党は真相を曖昧にしたまま強行採決に踏み切った。強引な議会運営も一因となり、中間選挙では投票率が前回14年の2倍に上昇して民主党が下院を奪還した。
共和党全国委員会の広報部長を務めたダグラス・ヘイ氏は「大統領選前に判事を承認した場合にトランプ氏が必ず優位になる保証はない」とみる。トランプ政権下で米社会の分断が進み、有権者の多くがすでに投票先を決めていると説明し「最高裁人事が大統領選にあまり影響しないことも考えられる」と指摘する。
民主党は最高裁の保守支配に警戒を強める。リベラル派のエドワード・マーキー上院議員は保守支配を薄めるため最高裁の定員を9人から増やす案を検討すべきだと主張した。上院トップのシューマー院内総務は22日の記者会見で「11月の上院選で多数派を奪還すればあらゆることを検討する」と語り、奇策である定員拡大を否定しない。
民主党の大統領候補であるバイデン前副大統領は、トランプ氏が新型コロナウイルスや人種問題から争点を最高裁人事にシフトさせることを警戒している。21日に中西部ウィスコンシン州で行った演説では最高裁判事ではなく、コロナ対策に多くの時間を割いた。
からの記事と詳細
https://ift.tt/2RMszlY
世界
No comments:
Post a Comment