Tuesday, September 8, 2020

コラム:合意なきブレグジットの悪夢再燃、離脱協定ほごの動き - ロイター

[ロンドン 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 「合意なきブレグジット」という悪夢がよみがえった。ジョンソン首相率いる英政府は、欧州連合(EU)との間で離脱協定をまとめてから11カ月を経た今になって、どうやら協定の重要部分をほごにする準備を進めているようだ。これは行き詰まっているEUとの通商交渉を打開する作戦なのだろうが、英国が無秩序な形でEUを離脱せざるを得なくなる可能性が再び生まれてしまった。

9月7日、「合意なきブレグジット」という悪夢がよみがえった。写真は1月、ロンドンの英首相官邸前で撮影(2020年 ロイター/Toby Melville)

今年1月に発効した英EUの離脱協定は、英国の金銭的な支払い義務、市民の権利、英領北アイルランドの取り扱いなどに関する問題を解決することが目的だった。それ以降、双方は新たな貿易協定の締結に向けた交渉に集中してきた。

ところが年末の移行期間終了までに完了することを目指してきたこの交渉は、漁業権や英国の戦略的産業への補助金がどこまで許されるかといった事案で意見が対立し、暗礁に乗り上げた。交渉が不調に終われば、英国の対EU輸出に関税や割当制度が適用されるし、EUからの対英輸出も同様の扱いを受ける。特に新型コロナウイルス問題がある今、こうした事態になってはどちらも経済的な痛手は大きい。ただジョンソン氏が昨年いったん回避したように見えた「合意なきブレグジット」がもたらす大混乱は、もっと大きなダメージを与えるだろう。

それなのに英政府は、せっかく成立した以前の合意を蒸し返そうとするのではないか。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、国家補助と北アイルランドの通関手続きの問題で英政府は「該当する離脱協定の項目の法的拘束力を消滅させる」ための新法案を上程しようとしている。この動きは、英国とアイルランドの双方が何年も費やして避けようとした国境における厳格な管理態勢につながりかねない。

ジョンソン政権が何を達成したいのか合理的に説明するのは難しい。貿易協定締結の希望を諦めて、以前の取り決め事項の一部を無効化すると決めたのだろうか。あるいはジョンソン氏は、通商交渉で合意できない場合、英国がいかに厄介な存在になるかを示し、EUの妥協を引き出そうとしているのかもしれない。だからといって、1年足らずのうちに条約を破ると脅す行為は、EUだけでなく、英国が貿易協定を結べる可能性があるその他諸国からの信頼を得る上で最善の方法とは程遠いように思われる。

ジョンソン氏は常に予測不能だ。昨年10月には、EUの要求に対して譲歩して離脱交渉の困難な局面を突破した上で、合意内容は英国にとって大勝利だと宣言した。今回も似たような結末になってもおかしくないが、今のところは最悪のブレグジットのリスクが復活したとみるしかない。

●背景となるニュース

*英政府は、欧州連合(EU)離脱協定の幾つかの重要な項目を優越する効力を持つ新法案の準備を進めている。フィナンシャル・タイムズ(FT)が6日伝えた。

*FTが3人の関係者の話として報じたところでは、この「国内市場法案」には、英領北アイルランドの通関手続きや、国家補助などを含めた分野について、「該当する離脱協定の項目の法的拘束力を消滅させる」条項が盛り込まれる見通しだ。

*EU側は、そうした措置は英国の国際的地位を傷つけ、移行期間が終わる年末に混乱を伴う離脱が起きる恐れが高まると警告した。

*あるEU外交官は「英国が国際的な義務を尊重しない道を選ぶなら、国際社会における立場が損なわれる。国際条約を履行しない国と一体だれが貿易協定を結びたがるだろうか。結局は自滅につながる戦略になるだろう」と切り捨てた。

*英政府はEUとの通商合意期限を10月15日に設定している。

*ジョンソン首相は7日、「それまでに合意できなければ、英EU間に自由貿易協定はないと想定する。われわれはそれを受け入れ、前に進むべきだ」と発言した。首相官邸が明らかにした。

*FTの記事に関して質問されたユースティス英環境相は、離脱協定に付随する北アイルランドに関する議定書(プロトコル)には、微修正が必要な多少の「法的な曖昧さ」があるのではないかと述べた。

*ユースティス氏はBBCラジオで「われわれには離脱協定があり、それは北アイルランドのプロトコルを含んでいる。われわれはそれを実行していく決意だ」と強調。現在の協議は、プロトコルの運用方法を巡って「残されている幾つかのテクニカルな細かい事項を詰める」作業を進めているところで、法的な確実性を示すための法整備が必要になるかもしれないとの認識を示した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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