Sunday, December 27, 2020

英EU交渉合意 欧州の一体感保つよう - 東京新聞

 欧州連合(EU)と、EUを離脱した英国との自由貿易協定(FTA)交渉が合意した。混乱回避を歓迎したい。コロナ禍によるダメージを広げないためにも、新たな協調関係を確立してほしい。

 合意では、人やモノの自由な移動は終了し、通関手続きを復活させるものの、これまで通りの無関税は維持する。英国とEUとの間で部品を供給する自動車産業などは最悪の事態を免れ、現地の日本企業にも安堵(あんど)が広がっている。

 EU離脱を決めた二〇一六年の英国民投票から四年半、混迷の末の決着だった。メイ前首相の離脱協定案は議会の賛成を得られなかったが、後任のジョンソン首相は一九年十二月の総選挙での与党保守党圧勝を追い風に、今年一月末に離脱を実現させた。以降、激変を緩和するためこれまでの関係を維持する移行期間に入り交渉を続けてきたが、期限は今月末に迫っていた。ぎりぎりの決着だった。

 交渉の追い風となったのは、皮肉にも、深刻化するコロナ禍だった。目下の経済悪化に加え、協定なき離脱で関税が復活すれば、さらなる打撃は計り知れない。

 対立が続く交渉のさなか、英国で新型コロナウイルスの変異種感染が拡大、EU加盟国が英国からの入国を制限し、一時物流がストップした。協定なきEU離脱後の混乱を「前倒し」で体験する形になったことも妥協を後押しした。

 交渉は、英国海域でのEU加盟国の漁業権を巡って難航したが、英国が、EU側の漁業権を認める一方で、漁獲高を25%削減させることで譲歩した。

 英国は年内、EUは年明けに議会承認を諮る見通し。

 ただ、関税はないものの、通関手続き復活により、物流の停滞や交通渋滞などの不安は残る。英、EUの製品安全基準の擦り合わせなどの詰めも必要だ。混乱を最小限にとどめる粘り強い交渉をさらに望みたい。

 移行期間を終え、英国はEUを完全離脱する。しかし、EU加盟国との関係は、地理的にも歴史的にも文化的にも不可分だ。EUのルールからは抜けるが、欧州の一部ではあり続ける。国境の壁を過剰に高くすることなく、協調と交流を続けてほしい。

 変異種感染では、物流と感染拡大阻止との両立が求められた。周辺国との調整は欠かせない。コロナ禍を一国で抑え切ることはできない。コロナとの闘いでも、欧州の結束を求めたい。

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