英国と欧州連合(EU)の協力関係に新しい時代を開くとされる自由貿易協定(FTA)は合意が先週ようやく成立したが、ロンドンの金融街シティーには助けとならない。金融サービスについては、EUによる別のお墨付きが必要だからだ。
英国の金融規制と監督は公平な競争環境を作り出すのに十分に堅固だと、EU当局者が判断する必要がある。これがなければ、英国の金融業界から資産や事業、人材が流出する状況は止まらないだろう。
JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックス・グループは最近、EU域内へのさらなる事業移転を始めている。JPモルガンの場合、2000億ユーロ(約25兆3800億円)相当の資産とスタッフ200人が今回の移転の対象に含まれるが、それで終わりではない。
ジョンソン英首相は27日の日曜紙サンデー・テレグラフ紙とのインタビューで、金融サービスに関して協定は「英国が望むほど恐らくカバーしていない」と認め、スナク財務相は金融サービス分野の市場アクセスに関する交渉は続くと述べている。
英国のEU離脱が短期的に金融市場を混乱させるのを防ぐ取り組みで進展はあったものの、英金融業界のEUとの最終的な関係についてのコンセンサスはほとんどできていない。同業界は長年享受してきたEU市場へのアクセスを、まさに数日以内に失おうとしている。
英国のバンカーと規制当局、政治家は通商合意が金融についての合意形成に弾みを付けると期待している。金融業界は100万人以上が雇用され、税収の1割強を担う英経済の要だ。
金融街シティーを代表するザシティーUKのマイルズ・セリック最高経営責任者(CEO)は「通商合意は歓迎だが、金融および関連の専門サービスはサービス分野での関係を展開させ続ける必要性を認識している」と述べた。
欧州のバンカーらも明瞭性を求めている。欧州の業界ロビー団体である欧州金融市場協会(AFME)は、国境を越えた金融市場アクセスをスムーズにするため双方の規制に「同等性」の決定を与える合意を呼び掛けている。AFMEのアダム・ファーカスCEOは「それにより、金融サービスで一段の協力の土台が築かれることを希望する」とし、「移行期終了時の混乱を和らげ新たな関係へのスムーズな移行を確実にするため、EUと英国が迅速に同等性決定を導入することが重要だ」と論じた。
それでも、最も楽観的な金融業者ですら、ロンドンが欧州全体の金融の中心であるという現状は保たれそうにないとみている。
フォンデアライエン欧州委員長はロンドンのシティーとEU の関係の「全てが変わる」と予告。フランス銀行(中央銀行)のビルロワドガロー総裁は10月に欧州の銀行に対し、デリバティブ(金融派生商品)取引を支える業務でロンドンのクリアリングハウス(清算・決済機関)を利用しなくなっていくという長期シフトに備えるよう呼び掛けた。
マクギネス欧州委員(金融サービス担当)は12月にユーロニュースに、「欧州が金融活動の中心をどこに置きたいかという中核的かつ根本的な問題に戻ってくる。それが長期的に、ロンドンの金融街であり続けることはないのは確かだ」と述べた。
原題: Brexit Deal Offers Scant Solace to City of London Under Threat (抜粋)
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