核協議の行方はどうなるのか。イランの新大統領に、反米保守強硬派とされる聖職者ライシ師が先週、就任した。 国際協調路線のロウハニ前政権から大きな転換だ。イラン核開発を抑制し、米欧が制裁を解除する核合意の再建は見通せなくなった。 ライシ新大統領は、制裁の全面解除を主張しており、核問題で大幅な譲歩を拒むとみられる。一方で、欧州連合(EU)が仲介する米国との間接協議を続ける方針であることにも目を向けたい。 イランの核開発拡大は米国との対立を深め、イスラエルなど周辺諸国との緊張を高める。軍事危機の再来もあり得る。 新政権は核合意への扉を閉ざすべきではない。米欧や周辺諸国も対話の機会をつくっていく必要がある。 ライシ師は神学校の出身で、イスラム革命に参加し、検事や検事総長などを歴任している。最高指導者ハメネイ師との関係が深く、大統領選での候補者制限は、ハメネイ指導部によるライシ師圧勝のお膳立てと言われている。 しかし、投票率は50%を切り大統領選で過去最低だった。白票が多く、国民の不満の表れだろう。 制裁でイラン経済は疲弊している。先月、深刻な水不足に見舞われた地方で生活困窮を訴える抗議デモが広がり、ハメネイ指導部を批判する声も上がったという。 指導部は、米欧資本なしでも自国産業を振興し経済再生できるという「抵抗経済」を主張している。だが、現実的で有効な策はなく、前政権は制裁解除に活路を見いだそうとしていた。 間接協議で、米国はイラン産原油やイラン銀行との国際取引を標的にした制裁を解除する考えを前政権に示したが、ハメネイ師や保守強硬派が全面解除にこだわり、協議は中断されてしまった。 ライシ師は核政策や外交の経験が乏しいと伝わる。高齢のハメネイ師の後継者とも目され、核協議では最高指導者の方針に追従するとみられている。 ただ、政情の安定化を図るのなら、制裁解除の交渉に向き合わざるを得まい。米国は、トランプ前大統領が一方的に核合意を離脱したことでイランの根深い不信を招いた経緯を踏まえ、直接協議の糸口を探るのが国際社会に対する責務ではないか。 茂木敏充外相は近く中東を歴訪し、イラン新政権と核開発を巡り会談するという。米国との橋渡しの役割を果たしてもらいたい。イランを孤立させてはいけない。
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