Saturday, November 13, 2021

NASA小惑星探査機「ルーシー」観測装置の電源オン、太陽電池完全展開の試みは11月16日以降に - sorae 宇宙へのポータルサイト

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木星トロヤ群の小惑星に接近する「ルーシー」を描いた想像図(Credit: Southwest Research Institute)

【▲木星トロヤ群の小惑星に接近する「ルーシー」を描いた想像図(Credit: Southwest Research Institute)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間11月5日、先日打ち上げに成功した小惑星探査機「Lucy(ルーシー)」に搭載されている観測装置の電源を順次オンにし始めたことを明らかにしました。展開が不完全とみられる片方の太陽電池アレイがどの程度展開できているのかも推定されており、現状維持も含めた対応を検討中のようです。

日本時間2021年10月16日に打ち上げられたルーシーは、2033年までの12年をかけて木星トロヤ群の小惑星7つと小惑星帯の小惑星1つ、合計8つの小惑星を探査します。木星のトロヤ群とは太陽を周回する小惑星のグループのひとつで、太陽と木星の重力や天体にかかる遠心力が均衡するラグランジュ点のうち、木星の公転軌道上にある「L4点」(公転する木星の前方)付近と「L5点」(同・後方)付近に分かれて小惑星が分布しています。

【▲ルーシーがフライバイ探査を行う小惑星の一覧(想像図)。上段左から:二重小惑星のパトロクロスとメノイティオス、ユーリバテス。下段左から:オラス、リュークス、ポリメレ、ドナルドヨハンソン。このうちユーリバテスは1つの衛星をともなう(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab)】

木星トロヤ群小惑星は初期の太陽系における惑星の形成と進化に関する情報が残された「化石」のような天体とみなされています。これらの天体を間近で探査することから、ミッションと探査機の名前は有名な化石人骨の「ルーシー」(約320万年前に生息していたアウストラロピテクス・アファレンシスの一体)から名付けられました。探査対象の小惑星については以下の関連記事もご覧下さい。

関連:NASA探査機「ルーシー」10月16日打ち上げ予定、木星トロヤ群小惑星に初接近

ミッションを主導するサウスウエスト研究所(SwRI)によると、ルーシーには3つの光学観測装置が搭載されています。現地時間11月5日までにこのうちの2つ、可視光カラーカメラと赤外線撮像分光装置から構成される「L'Ralph」および熱放射分光器「L'TES」の電源がオンになり、NASAによれば正常に動作していることが確認されました。残る望遠カメラ「L'LORRI」の電源は現地時間11月8日にオンになる予定とされています。

【▲ルーシーに搭載された太陽電池アレイの地上での展開試験の様子(Credit: Lockheed Martin)】

また、ルーシーには扇のように広げて展開される直径7.3mもの巨大な円形(正確には十角形)の太陽電池アレイが2基搭載されていますが、このうち片方が完全には展開できなかった可能性がすでに明らかにされていました。NASAの現地時間10月19日の発表によると、展開が不完全な太陽電池アレイの発電量は完全に展開された太陽電池アレイとほぼ同じで、得られる電力も探査機の状態を維持するのに十分とされています。

NASAによると、現地時間10月26日に実施された姿勢変更後に太陽電池アレイを流れる電流の値を計測した結果、展開が不完全な太陽電池アレイの展開率は75~95パーセントと推定されています。この太陽電池アレイは本来のロック機構では固定できていないものの、畳まれていた太陽電池アレイを展開時に引っ張る役割を果たしたストラップによって現在は保持されているとみられています。

【▲太陽電池アレイの展開を終えたルーシーを描いた想像図。片方の太陽電池アレイが完全には展開できていないとみられている(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)】

対応チームがエンジニアリングモデルを用いて検証を行ったところ、ストラップによる太陽電池アレイの展開プロセスが正常に完了されなかった可能性があるものの、現在の状態に至った理由は不明のままとされており、根本的な原因を把握するための検証が続けられています。

NASAとサウスウエスト研究所では現状維持を選択した場合ミッションにどのような影響が及ぶかも考慮した上で対応を検討しており、太陽電池アレイを完全展開させる試みは11月16日以降に行われる見込みです。

関連:NASA小惑星探査機「ルーシー」打ち上げ成功!しかし太陽電池アレイに問題発生か

Image Credit: NASA/Bill Ingalls
Source: NASA
文/松村武宏

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