
海岸漂着したプラスチックごみは、破砕を繰り返し、やがて微細片(マイクロプラスチック)となる。これが海に流れ出て、日本近海1キロ四方では約100万粒が浮遊している。大量のマイクロプラスチックが浮遊する海では、誤食した生物に体長低下など様々(さまざま)な障害が現れる。いまの浮遊量は障害を引き起こす水準ではないが、このままでは2060年代に閾(しきい)値を超えるとの予測がある。確かな予測には課題も残るが、予防原則に従って、いま私たちは何らかの方策を講じる必要がある。
わが国は年間に約900万トンのプラスチックごみを廃棄するが、ほとんどは焼却や再利用など適正処理される。ところが約1%に相当する14万トンは、どの処理経路にも乗らず環境中に漏れ、いずれマイクロプラスチックとなる。何であっても99%を100%まで高めることは難しい。人口比を考えれば、中国や東南アジアでは年間で100万トン規模の漏出が避けられない。管理が個人に委ねられる使い捨てプラスチックは、一定数が環境中に漏れてしまう。それが積み上がり大きな環境問題となったのである。そうであれば、海洋プラスチック汚染の回避には、使い捨てプラスチックの総量を抑制するしかない。レジ袋有償化は総量抑制の端緒に過ぎない。
ただ、プラスチックは富裕層の贅沢(ぜいたく)品ではない。プラスチックのボトルや包装材がなくなれば、安全な水や食事の供給が滞る。世界を見渡せば経済的な弱者ほど負担が大きい。これからは弱者に配慮した、しかし確実な使い捨てプラスチックの削減に、社会の合意が図られるべきだろう。
合意形成は信頼できるエビデンス(科学的根拠)に基づく。いずれ無理な議論は合意の足枷(あしかせ)となる。例えば、プラスチック削減の理由として、プラスチックごみの焼却がCO2の排出を招くからとの声がある。だが、わが国でプラスチックごみの焼却に伴うCO2排出量は、全体の0・5%程度に過ぎない。人を説得できる情報とは言いづらい。日本の廃棄プラスチック量(容器包装材)は世界で2番目に多いからとの声もある。だが、典拠となる国連環境計画の報告書には集計根拠がなく、杜撰(ずさん)な情報である。私たち研究者には、合意形成に有益な情報を社会に発信する重い責任がある。
磯辺 篤彦(いそべ・あつひこ)九州大教授 1964年、滋賀県生まれ。専門は海洋物理学。2018年環境大臣賞、19年内閣総理大臣賞、20年文部科学大臣表彰。近著は「海洋プラスチックごみ問題の真実」。
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August 09, 2020 at 09:00AM
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