住宅ローンに関する記事は毎日、数多くネットで見かけます。 とくに新しい生活様式が定着しつつある最近では、住宅ローンについて見直す、考え直す内容も多くなっています。 元記事で画像を全てみる 記事執筆のため、ほかの人の記事やサイト上の意見、いわゆる口コミも参考にしていますが、なかには 「ある意味当たっているけれど、少し違った見方もできるのでは?」 「その考えは、ちょっと極論すぎるのでは?」 と感じてしまうものもあります。 あまりネガティブな表現や記述ばかり見ていると、「住宅ローンを借りるのはいけないことなの?」と迷う人がいるかもしれません。 そこで今回は、住宅ローンに関するいろいろな声について、銀行員がお答えします。
住宅ローンへのいろいろな声に銀行員がモノ申す
ここからは、私が見かけたなかで触れてみたいキーワードを紹介します。 ■1. そんなに借りなくても 「不動産を購入するときの頭金まで借りなくても、それくらい準備しなきゃだめでしょ」 「諸費用までローンで借りるくらいなら、もっと自己資金が貯まるまでがまんしたら?」 住宅ローンでどこまで借りるか、自己資金はどのくらいあるのが理想かといった問題です。 借入れは少ないほうがいいのですが、住宅購入にはいろいろな経費がかかります。 とくに建売住宅、や分譲マンションなどを購入するときは、契約をむすぶとき、購入額の10%程度を頭金として払う場合があります。 頭金は手持ちの自己資金で支払うこともありますが、住宅ローンに頭金まで含め借りることも可能で、当然ながら借入金額は頭金のぶんだけ多くなります。 ■□フルローン、オーバーローンはもともと不動産投資の用語□□ 物件購入の頭金までローンで借りることをフルローンと呼びます。 いっぽう頭金だけでなく登記費用などの諸経費まで借りるのはオーバーローンです。 借入れは少ないほうが理想、といった観点でこうしたフルローンやオーバーローンに対する否定的な記事やコメントを見かけます。 フルローンやオーバーローンという単語は、もともと不動産投資、賃貸経営で用いられていたものです。 家賃収入で利益を上げる不動産投資では、借入れ=投資額は少ないほど投資効果(利回り)は良くなるので、フルローンなどには否定的になります。 これを住宅ローンにも当てはめると、冒頭のような声になるのだと思います。 一度購入したら、原則としてずっと住み続づけるのが自宅ですので、最初から売却や利回りを考えるのは無理があります。 繰り返しになりますが、 借入れは少ないほうがいい に決まっています。 しかし、住宅ローンではフルローン、オーバーローンもいけないことではないと銀行員は考えます。 ■2. ふたりそろって借りなくても 「ひとりの収入で足りないから、ふたりそろって借りるのは、スタートでもうムリでは?」 「ペアローンを組む人は、絶対に別れないと自信があるんですね」 ペアローン:ローンの契約や返済など、A、Bそれぞれ別のローンを2つ、ペアを組んで借りる 連帯債務:ローン契約から書類は2人が連署し、どちらか1人の口座から返済が引き落とされる ひとりだけでなく、2名で同時に借りるこれらのローンでは、関係が破綻したときに問題が生じる可能性があります。 ■□別れるのは自由だけど注意は必要□□ ペアローンでも連帯債務でも、確かにローンを組んだふたりの関係がこわれると大変です。 「婚約者同士でペアローンを組んだが、婚約破棄になってしまった。新居とする予定だった物件にはふたりとも住むつもりはないが、すぐに売れないしローンを返す自己資金もない」 「夫婦連帯債務で家を建てたが、離婚して新しい家庭を持った相手が、今もローンを返し続けている」 これは実際に私が銀行で見聞きしたケースですが、人間関係や人生の悲喜こもごも、がからむので揶揄するような記述さえ見受けられます。 ■□よくある住宅ローンでも問題点は同じ□□ ペアローンだから、連帯債務だからといった特徴ではありません。 よくある形式のローンでも返済に困ったり、保証人になっている夫婦関係がもつれてトラブルになったりと、問題点は同じです。 住宅ローンの借りかたのひとつとして確立されているペアローン、連帯債務はいけないことではありません。 ローンを借りていても別れるのは個人の自由意志で決めるものですが、別れたあとの問題点はしっかり考えたうえで決めるべきです。
住宅ローンが悪いことではない
価値観の多様化や社会の変化により、最近ではLBGT、同性パートナー同志のローンを扱う銀行も増えています。 以前ならペアローン、連帯債務といった名称の前に「夫婦連帯債務」などと呼ぶのが一般的でしたので、時代の変化を感じます。 しかし、そうした変化はあっても、自分が住む家を手に入れる住宅ローンはほかの借入れ、融資とは一線を画した特別なものであり、今後もそうあり続けると考えられます。(執筆者:加藤 隆二 / バブル期に入社して、以来銀行一筋30年)
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