Sunday, July 4, 2021

社説:デジタル課税大枠合意 不公平是正へ各国連携を - 毎日新聞

 世界の130カ国・地域が法人税の国際ルール見直しに大枠で合意した。懸案となってきた巨大IT企業の課税逃れを防ぎ、経済的な不公平を是正するものだ。

 税は国家の主権に関わるため、交渉は難航した。進展したのは、協調を重視するバイデン米政権が発足してからだ。合意は各国が歩み寄った成果と言える。

 柱の一つは、IT企業を対象とするデジタル課税の導入だ。

 米国のグーグルやアマゾンなどはネットでのサービスを通じ、国外で巨額の利益を得ている。だが法人税は少ししか払っていない。製造業を想定した今のルールでは、課税できるのは工場などがある場合に限られるからだ。

 合意では、工場がなくてもネットサービスの利用者がいれば、課税できる仕組みを設ける。経済のデジタル化に対応した。

 もう一つは、世界共通の最低税率を導入することである。

 各国は競争力を強化しようと法人税を相次いで引き下げてきた。アイルランドなど経済規模の小さな国は、外資を呼び込むために税率を10%前後と極端に低くした。IT企業は、こうした低税率国に利益を集めて、課税逃れを図ってきたとされる。

 最低税率は15%以上とすることで合意した。行き過ぎた減税競争に歯止めをかける効果がある。

 今回の見直しは、新型コロナウイルス禍による格差拡大や財政悪化への対策としても重要だ。

 景気低迷で生活難に陥る人が急増した。各国は経済対策を余儀なくされ、多額の借金を抱えた。一方、オンライン取引の活発化でIT企業の利益は一段と増えた。

 IT企業への課税で増えた税収を経済対策の財源に充てれば、格差是正と財政再建に役立つ。

 15%の最低税率導入によって、世界全体で税収が16兆円以上増えると推定されている。日本も税収増が見込まれる。

 10月の最終合意を目指すが、課題は残る。大枠合意には、低税率のアイルランドやハンガリーなど9カ国が加わらなかった。例外措置を求めてくる可能性がある。

 例外を相次いで認めると、課税逃れ対策の効果が薄れてしまう。各国は連携して、公平な税制の実現に動くべきだ。

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