Tuesday, September 7, 2021

熱海の路地裏にある「ひみつの本屋」 無人店舗から“まち読み”が始まる - 新公民連携最前線

2021年6月1日、熱海の銀座商店街の路地裏の一角にオープンした無人古本屋『ひみつの本屋』。この店が注目を集めている理由は、その新しいコンセプトにある。無人の古本屋で、店名の通りに秘密めいていてドアには鍵がかかっている。入店には500円の入場料が必要で*、店内に入るには近隣の協力店からドアを開けるキーを借りる必要がある。ぎっしりと並べられた本は購入するだけではなく、3冊までの貸し出しも可能。だから、好きな本を選んで熱海のまちに持ち出し、好きなところで読むこともできる。“本”を通じて地域の交流を生み出し、活性化を図ろうとする熱海の小さな古本屋を取材した。

*熱海市で発生した土石流災害をうけ、当面、熱海市在住・勤務の人たちは入場無料で利用可能。

 熱海銀座商店街の路地裏にひっそりと佇む、3.5坪ほどの小さなお店。そこはちょっと変わった古本屋『ひみつの本屋』だ。どこが変わっているのかといえば、この本屋は無人で、入り口のドアに鍵がかかっているところ。店内に入るためには、近隣の協力店でドアを開けるためのキーを借りなくてはならないのだ。

窓から中の様子が少しだけうかがえる(写真:ひみつの合同会社)

窓から中の様子が少しだけうかがえる(写真:ひみつの合同会社)

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 「中の様子がわからない鍵のかかった部屋に入るときって、なんだかワクワクしたり、ドキドキするような感覚がありますよね。いろんな空想が広がって、想像力が高まっていくような、そんな本屋にしたかったんです」

 そう話すのは、東京都内の設計事務所に勤める田坂創一さん。『ひみつの本屋』は、田坂さんと都内のIT会社に勤務する渡邉沙絵子さんの二人が2021年6月に共同でオープンした古本屋だ。二人はもともと熱海の休館した映画館の近くにあった、呉服店の店舗兼住居をリノベーションしたゲストハウス『ロマンス座カド』の企画メンバーだった。この映画館『ロマンス座』の映画チケット売り場だった区画が空いたことをきっかけに、熱海のまちと本が大好きで「熱海で書店をやりたい」という思いを抱いていた渡邉さんと、シェア本棚『西日暮里ブックアパートメント』の管理人でもある田坂さんは、書店の事業化を計画し始めた。

田坂創一さんと渡邉沙絵子さん(写真:編集部)

渡邉沙絵子さんと田坂創一さん(写真:編集部)

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 二人とも東京在住で、都内で仕事をしているため、業態は“無人書店”にすることに。さらにセキュリティーについて考えていくうちに、「いっそのこと、鍵をかけてしまえばいいのでは」という発想が生まれた。

ドアには鍵がかかっており、鍵を開けるためのキーを借りる必要がある(写真:ひみつの合同会社)

ドアには鍵がかかっており、鍵を開けるためのキーを借りる必要がある(写真:ひみつの合同会社)

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 「鍵は、ただ暗証番号を打ち込むようなものだとつまらない。どんな鍵だったら、体験価値が上がるだろうって考えていきました」(渡邉さん)

 『ひみつの本屋』のドアにかかっているのは、どっしりとした重量感のある蔵前錠。解錠するためのキーは近隣の店舗で借りることができる。熱海銀座通りにある『guest house MARUYA』(ゲストハウス)、『caffè and bar QUARTO』(イタリアンバール)、『Le palais』(ワインバー)、『スナックあた美』(スナック)、『ナギサウラ』(ホステル)の5店舗だ。事前に公式サイトで500円の入場券を購入し、5店舗のいずれかの店頭でその入場券を提示すれば、キーを渡してくれる仕組みになっている。

借りてきたキーで解錠する(写真:ひみつの合同会社)

借りてきたキーで解錠する(写真:ひみつの合同会社)

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 「協力してくれている店はどこもとても素敵なところで、本を読むシチュエーションにもぴったりです」(渡邉さん)

 「キーを借りるという仕組みにすることで、協力店の創客、集客にもなります。そこでいいマッチングができれば、お客さんと地元のお店でまた新しいストーリーが生まれる可能性もあるんじゃないかと思います」(田坂さん)

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