Monday, December 25, 2023

自宅を担保にお金を借りる《リバースモーゲージ》老後資金を残しつつ、リフォームや建て替えも。目的別活用事例と ... - livedoor

最近よく耳にする「リバースモーゲージ」。自宅を担保にお金を借りられるサービスですが、本当にメリットがあるのか気になっている人も多いのではないでしょうか。住宅ローンに詳しい専門家に、その仕組みと活用のコツを聞きました(構成=山田真理 イラスト=ひしだようこ)

【図】「リ・バース60」目的別活用事例

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自宅に住み続けながら融資を受けられる

住まいの悩みは、年齢とともに増えていきます。「自宅が老朽化したのでリフォームや建て替えを検討したい。でも、老後の生活費やこれからかかる医療・介護費用としてある程度の現金は残しておきたいし……」という方も多いでしょう。

老後資金を残しつつ、リフォームや建て替えの費用を手に入れる。その方法の一つに、「リバースモーゲージ」という融資制度があります。これは、自宅を担保にして現金を借り入れるというもの。不動産は持っているけれど現金の蓄えが少ない高齢者を救済する手段として、世界各国で発展してきました。

現在日本で普及し主流となっているのは、2009年に登場した、満60歳以上が対象の「リバースモーゲージ型住宅ローン(【リ・バース60】)」。住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)が民間の金融機関と提携し、リバースモーゲージの仕組みをもとに独自開発した商品です。

自宅を担保にすることで、そこに住み続けながら自宅のリフォームや建て替え・購入など「住宅に関する融資」を受けることができます(子どもと同居する二世帯住宅は対象外)。利息だけ払い続け、元金は契約者の死亡後に自宅の売却などで一括返済する仕組みです。

「定年以降は住宅ローンが組めないと聞いていたけれど、怪しい商品ではないの?」と疑われるかもしれませんが、どうぞご安心を。これはメガバンクから全国の地方銀行、信用金庫まで幅広く取り扱っている、安全性が高く信用できる金融サービスです。


●住宅を担保に融資を受ける際の流れ(図を拡大)

融資を受ける際の流れを上の図に記しました。まず金融機関が担保となる物件を評価し、融資限度額を設定。その範囲内で融資を受けた後は、契約者が亡くなるまで毎月利息のみ支払います。一般の住宅ローンより毎月の支払額が少ないため、年金生活者も利用しやすいのがメリットでしょう。

契約時に主債務者の配偶者を連帯債務者にしておけば、主債務者の死後も、配偶者はその家に住み続けることが可能。元金は債務者全員が亡くなった時に、相続人が担保物件を売却するなどして一括返済します。

この商品の大きな特徴は、あらかじめ住宅金融支援機構と金融機関が住宅融資保険契約を結んでいること。万が一相続人が元金を完済できない場合は、機構からの保険金で残りの元金相当額が補填されるようになっているのです。

これと似た商品に、「リバースモーゲージローン」があります。大枠の仕組みは【リ・バース60】とほぼ同じですが、生活資金であれば融資の使い道は自由です。

「そのほうがいいのでは?」と思うかもしれませんが、融資限度額が低く、金利はやや高め。担保物件の評価も厳しく、対象は首都圏など主要都市部の戸建住宅が中心なので、使い勝手がいいとは言えません。取扱金融機関も少ないのが実情です。

また、近ごろ広告などで目にする「リースバック」。リバースモーゲージと名前が似ていますし、「自宅に住み続けられる」という点で混同しがちですが、実はまったく別のサービスです。

現在の住まいを業者に売却して代金を受け取り、その後は買主にリース料(賃料)を払って同じ家に住み続けることができます。

一見便利なようですが、「本来の資産価値より2〜3割安く買われてしまう」「賃料の合計額が数年で売却価格を超えてしまった」などの問題に加え、「賃貸借の契約更新を断られ、住み続けられなくなった」といったトラブルの報告が。私としては、読者の皆さんにとってメリットがあるサービスではないと考えます。


●【リ・バース60】目的別活用事例(表を拡大)

年金生活のシニアもリフォームを実現

では、住まいの改善に活用できる【リ・バース60】には、実際にどのような利用例があるのか、上の表をもとにご紹介しましょう。

読者の皆さんの関心が高いのは、自宅のリフォームではないでしょうか。バリアフリーにしたり、老朽化した設備を新しくしたり。この例に限らず、リフォームは物件の資産価値を高めるため、融資を受けることができます。

融資の限度額は、担保評価額の50%または60%です。80代のAさんは、自宅を担保に300万円の融資を受け、自己負担なし、毎月9000円という少ない支払額でリフォームを実現しました。【リ・バース60】を利用した戸建住宅のリフォーム事例でも、毎月の支払額は平均1万2000円(22年度)。これならば、年金生活者でも検討の余地があるでしょう。

ほかにも、子どもが独立したので夫婦二人暮らしにちょうどいい広さの家に建て替えたい、と考える方も多いのでは。Bさんの場合、自己資金を500万円入れ、金融機関からは1300万円借りることに。毎月3万1000円の支払額で自宅を建て替えることができました。

70代のCさんは、シニア向け新築マンションを購入。このケース以外に、子どもの家の近くに引っ越す、郊外から利便性の高い都市部に住み替えるなどの目的でマンションを購入することもあるでしょう。

この場合、担保となるのは新しく購入したマンションです。それまで住んでいた自宅の売却益や貯金で購入する方法もありますが、手元に残る現金が少なく心もとない場合、新居を担保に融資を受けるのも一つの方法だと思います。

これらの活用方法以外に、住宅ローンの借り換えも可能です。現役時代には無理なく支払えていた月々の返済が、年金生活で負担になってきた――。そんな時、自宅を担保に借り入れた資金で契約中のローン会社に元金を一括返済してしまえば、今後は利息のみの支払いで自宅に住み続けることができます。

リスクを踏まえて事前に計算を

このようにメリットが多そうな商品ですが、利用に際してリスクもありますので覚えておきましょう。

第一に、金利変動のリスクがあることを忘れてはいけません。変動金利型で契約した場合、金利が上昇すればそのぶん月々の支払額も上がります。1000万円借りて金利年3%なら毎月2万5000円ですが、1.3倍の3.9%になれば月々3万2500円に。

金利が上昇しても一定のゆとりを持てるように、借入額は慎重に検討することが大事。現状では取扱金融機関が少ないものの、固定金利型を選ぶのもおすすめです。

ほかに意識しておきたいのが、長生きのリスクです。この商品は契約者が亡くなるまで利息を支払い続ける必要があるため、長生きしたぶんだけ支払額は増えます。毎月の利息額が2万円でも、60歳から90歳まで30年間支払ったら720万円になるので、あまり早い段階で借りるのはおすすめしません。

ご夫婦で契約する場合、夫に先立たれたら妻一人で利息を支払い続けなければならない可能性があることも想定しておきましょう。

出費が増える先々のことを考え、夫が生きている間に繰り上げ返済をしたり、夫の死亡保険金を使って一括返済したりして負担を減らす工夫を。金利変動リスクも含め、自分一人が長生きしても無理なく支払い続けられるかどうか、事前に計算しておきましょう。

知っておけば安心!利用する際のチェックポイント

【Point1】
金利が上昇すると月々の支払額が増えるため、借入額はできるだけ少なく設定しておく

【Point2】
長生きしたり夫と死別したりすることを前提に、利息を支払い続けられるかシミュレーションをする

【Point3】
相続人に、「自宅や土地が相続できない可能性が高いこと」「死後手続きが必要になること」などを伝えておく

【Point4】
自宅の売却だけで元金を返済できない時のために、相続人が残った債務を返済しなくていい「ノンリコース型」を選択

相続についても注意が必要です。前述したように、元金は契約者が亡くなった時に相続人が担保物件を売却して一括返済します。子どもが「家は自分が相続したい」と考えるケースもあるので、契約前に親子でよく話し合っておくこと。

家や土地は相続できない可能性が高いこと、死後の売却手続きが必要になることは必ず前もって伝えてください。ただし、相続人が元金を一括返済すれば物件を手放す必要はありません。

また、担保物件の価値が下落して売却代金では元金が完済できないケースも考えられます。相続人に返済の請求が及ばないように、相続人が残った債務を返済する必要がない「ノンリコース型」を契約時に選んでおくとよいでしょう。

相続人に残った債務が請求される「リコース型」に比べて金利は高くなりますが、前者を選ぶほうが安心です。

ちなみに相続人がいない場合は、契約者の死亡後、機構が金融機関から債権を取得して担保物件の売却手続きを行ってくれます。財産を残す子どもや親族のいないおひとりさまが、自宅を担保にして最後まで快適な住まいを維持し、死後はスムーズに遺産を処分する。そんな使い方が理想かもしれません。

最後に、【リ・バース60】は、利用条件や融資の内容が金融機関によって異なります。詳しい情報が知りたい方は、お近くの取扱金融機関で相談するとよいでしょう。

自宅という財産を活用し、老後資金を手元に残しながらよりよい住まいを実現できるリバースモーゲージ型の住宅ローン。もちろん悩みをすべて解決してくれるウルトラCではありませんが、一つの選択肢として検討する価値はあると思います。

「自分にはまだ早い」と思う人も、こうしたサービスがあると知っておくだけで、老後の不安が軽くなるのではないでしょうか。

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