Friday, October 15, 2021

国際課税ルール 歴史的合意を円滑に実行せよ - 読売新聞

 多国籍企業の「課税逃れ」を防ぐ国際課税の枠組みが、最終合意に達した。時代の変化に即して制度を見直す意義は大きい。合意に沿って円滑に実施してもらいたい。

 経済協力開発機構(OECD)の全加盟国を含む136か国・地域が、国際課税の新ルールで合意した。主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、閣僚レベルでこれを支持した。2023年の導入を目指すという。

 法人税の最低税率を世界共通で15%とするほか、「GAFA」と呼ばれる米巨大IT企業などに応分の税負担を求める「デジタル課税」を創設するのが柱だ。

 税制は、各国の重要な主権である。協議に10年近くを要したとはいえ、136もの国・地域が合意に至ったことを歓迎したい。

 法人税は、1980年代以降、各国が外国企業の誘致などを狙って引き下げ競争を続けてきた。これに歯止めをかける歴史的な転換点と言える。世界で年17兆円の税収増が見込めるという。

 7月の大筋合意では、最低税率の水準について「15%以上」としていたが、最終案で15%に確定したため、税率の低いアイルランドなどが賛成に転じた。

 巨大IT企業は、タックスヘイブン(租税回避地)と呼ばれる低税率の国に利益を移し、課税逃れを図っているとされてきた。最低税率の導入は、そうした行為を抑止する効果が期待される。

 新型コロナウイルス対策で、各国の財政が急速に悪化したことが合意を後押しした。主要国で格差是正のための再分配を重視する傾向が強まっており、財源の確保につなげる思惑もあるのだろう。

 一方、デジタル課税は、工場などの拠点がなければ国が法人税を課税できないという原則を約100年ぶりに転換する。

 巨大IT企業はインターネットを使い、拠点を置かない国でも事業展開して 莫大ばくだい な収益を上げており、適切な課税が難しかった。

 新制度は、売上高が200億ユーロ(約2・6兆円)超で、売上高に占める利益の割合が10%超の企業が対象で、世界の約100社が該当するとみられる。拠点がない国も、自国での売上高に応じた税の配分が受けられるようになる。

 ただ、最低税率の実施は各国の法改正が前提で、議会の審議が難航する国が出かねない。デジタル課税は、多国間の条約作りが必要となる。歴史的合意が世界経済の発展につながるよう、各国は引き続き協調に努めねばならない。

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